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ゆっきー監督のサブカルチャー談義16

最終更新: 2018年12月12日

こんにちわ。ゆっきー監督です。


そろそろ年末ですが我々アーティストは日々が勝負。


年末年始も休まず働かせていただきます。


さて、今回のサブカル談義は今となっては本当にサブカルとも言える作品です。




アンドレイタルコフスキーの「惑星ソラリス」


1972年ロシア(旧ソ連)で上映された2時間45分という大作で、SF映画の傑作中の傑作です。


1968年のSF映画の傑作の誉れ高いスタンリーキューブリックの「2001年宇宙の旅」とよく比較される作品ですね。


ちなみにタルコフスキーは作品だけではなく人格的にもかなり破天荒な人だったらしく、「2001年宇宙の旅」をかなり酷評しています。


個人的にはどちらも大好きですが。


さて、この惑星ソラリスにはたくさん逸話が残されています。


有名なのはやはり「首都高」でしょう。


この作品、というよりタルコフスキーの作風として「とにかくワンカットが長い」ということが挙げられます。


そしてこのロングカットではだいたい特にドラマが起きません。


ただひたすらにその風景や役者の表情を映します。


もちろんそこには意味がたくさん秘められていますが、初見の人、特に最近の映画しか観ていない人は確実に困惑します。


初めて僕が観た時もそうでした。


なんの前触れもなく、突然東京在住の人には普通の風景である「首都高」が現れます。


そしてそれがただ延々と映し出されています。


「え?何これ?首都高?なぜ????」


という疑問を持たない人はまずいないでしょう笑。


そもそもは近未来の映像を描くべく来日したタルコフスキーは、万博の映像を撮影するつもりでした。


でも許可が下りず、当時まだ建築物として新鮮だった「首都高」に近未来を感じ、そのまま撮影、本編に使用したそうです。


そしてこの首都高、親睦深かった黒澤明監督の事務所へ行く途中に撮影したそうです。


現在の我々が見ると「?」しか浮かばないのですが、首都高そのものに近未来を感じたということは、タルコフスキー美学をよく表しているエピソードの1つです。


そんな首都高などに近未来的ビジョンを込めたこの「惑星ソラリス」は、僕は「初見殺し」と呼んでいます笑。


本当に誤解してほしくないのですが、この作品を観ていると、初見では間違いなく「眠く」なります。


ちなみに僕は一度も寝ずに最後まで観るのに5回はかかりました。


これは決して作品がつまらない、というわけではありません。


面白い、最後まで観たい


なのに眠くなるんです。


こんな体験は初めてでした。


理由は映像、音楽、役者の演技、全てにおいて心地よく、そして美しいからです。


先が観たい


でも眠い


という奇妙な感覚になります。


物語的には安息できるものではないのですが、とにかく映像が美しい。


これこそまさに映像マジックです。そしてこのマジックは「惑星ソラリス」だけではなくタルコフスキー作品全てに見られる特徴です。


「ノスタルジア」「ストーカー」「サクリファイス」などにもこのマジックは随所に見られます。個人的には「ノスタルジア」のタルコフスキー流映像マジックには僕の人生でも屈指の衝撃を受けました。


とにかくタルコフスキーという人はこの「映像マジック」を鬼のように追求する人で、そのせいで、「惑星ソラリス」の原作者レムとガチ喧嘩をしています。


レムとしては映画版ソラリスが自分の作品と全く違うことに腹をたて、タルコフスキーは自分の映像マジックに自信があります。


今でこそ原作者は「映画版は別物」という認識でいる作家が多いですが、時代的にエンターテイメント界は尖りまくっていた時期。


さらにレム自身、かなりプライドの高い人で二人は結局喧嘩別れしてしまいました。


似たようなエピソードで、これまたキューブリックですが「シャイニング」の映画化で、原作者のスティーブンキングと喧嘩しています。


尖ってますねえ笑。


面白いのは、キューブリック版シャイニングを気に入らなかったキングが、自ら作り直した「キング版シャイニング」がとてつもなく駄作だったこと。


原作者だからといって映画化に成功するとは限らないわけです。


「惑星ソラリス」は後にハリウッドがスティーブンソダーバーグ監督の元、ジョージクルーニー主役で現代アレンジし、リメイクされています。


ソダーバーグといえばオーシャンズシリーズで有名で、素晴らしい監督さんですが、ソダーバーグ版ソラリスは…。


個人的には驚くほどつまらない作品でした…。


そう考えると、タルコフスキーという人の「芸術至上主義」はずば抜けていたと言えるでしょう。


謎の空中ブランコのシーンといい、とにかくカットのインパクトが凄まじい。


それにやはりソラリスといえば「海」ですね。


「海」を生命体として表現していますが、この表現スタイルがまた独特すぎて、こういった点も「初見殺し」の名にふさわしいです。


「自分は映画センスがある!」と自負している現代の人は、必ず一度は観なければいけない作品です。


最近の映画しか観ていない人は必ずそのプライドは一度引き裂かれるでしょう。


そして「映画」の奥深さを知ることになります。


ある意味ではサブカルチャーの極地ともいえる作品がこの「惑星ソラリス」なのです。



今回のサブカル談義の主題は、実は「惑星ソラリス」から学ぶべきことです。


こういった視聴者に媚びない作品は今ではほとんど見られなくなりました。


視聴者に分かりやすく伝えることが大事なのは充分承知の上の話ですが、どうも最近の映画は、というか映画に限らずですが「媚びている」ように感じるのは僕だけでしょうか?


伝えたい


だから敷居を低く設定する


という現代エンタメにありがちな「ねじれ現象」はとにかく嫌いです。


作品が分かりやすいと、触れた人は何も考えることなく作品を理解することができます。


とにかく今時の制作者は皆「人に伝わるように全力で工夫」しています。


そうしなければ数字が取れないから、という「予測」のもとに。


これははたして良いことなのでしょうか?


考えずに理解できれば、人のセンスはどんどん劣化していきます。自分の理解力の範疇でしか物を見なくります。当然劣化していきますよね。


色で例えるなら、優しい黄色しか見ていなかったら、刺激的な赤は目に毒です。


眼球が赤を拒絶する。ならば赤は見ないようにする。当然の措置です。


すると、制作者はよりマイルドな黄色、つまりより分かりやすい作品を作らなければいけない。


この風潮は完璧に負のスパイラルだと個人的には感じています。


テレビ業界がいい例ですね。


ちょっと刺激が強いと人はすぐテレビ局にクレームを入れる


テレビ局は自粛することになり、結局毒にも薬にもならない作品を作らざるをえなくなる。


ひたすらそれの繰り返しです。


クレーム入れるくらいならテレビつけるなよ!と僕はいつも思うんですが…。


あげく理由が「子供に悪影響を及ぼす」ですよ?


テレビ見たくらいで悪影響を受けるような子供に育てた親が悪いに決まってるじゃないですか笑。


こうして無責任で他力本願、教育不足を世界のせいにするモンスターペアレンツの出来上がり、というわけです。


この「ねじれ現象」は作品に触れる人達のアンテナが奇妙な形に歪んでしまったのが元凶です。


どうして歪んだのかは、卵が先かニワトリが先かの類の話ですが。


この風潮はもう変わらない、というか悪化していくでしょう。


悪影響がありそうなものは全てダメ、という世の中になり、世界は生ぬるい温室になっていく。


だからといって、今時ソラリスのような作品を作って売れるか?


と言われれば…


それは分かりません。絶対に。


そもそも作品を発表した時点で売れなければいけないのはプロとして当然の使命です。


僕が言いたいのは「敷居を下げた作品だけが売れるとは限らない」ということです。


分かりづらいから売れないよ


という人はたくさんいるでしょうが、そんな人達に僕は言いたい。


じゃあ君には何が売れるのか分かるのか?と。


君は神か?と。


あくまで現代のブランドを統計的に計測しているだけですよ、そんな理屈は。


そうした頭がかたい連中にこそ、今この2018年に観てもらいたい作品が「惑星ソラリス」です。


この作品がなぜ今も傑作と言われているのか?


よーく考えてほしいです。


映画のみならず作品に触れるという心構えをきっと教えてくれるでしょう。


テレビ局にクレーム入れる暇があるなら自分の子供にこの作品見せた方がよほど価値ある教育だと僕は思いますね。


「惑星ソラリス」は現代人へ警告を与えてくれます。


もちろん僕自身も含めて。


本当にいつ見ても勉強になり、考えさせられる作品です。



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