• ゆっきー監督

ゆっきー監督のサブカルチャー談義2

今日は映画についてお話しましょう。


なにせ、去年チーム西の森制作の映画が映画祭で入選、入賞を果たしたのは、まぎれもなくこの人のおかげとも言えますから。


今日ご紹介するのはこちらです。


デビッドリンチ監督作品「インランドエンパイア」です。日本では2007年に公開されました。


僕にはたくさん好きな映画監督がいますが、たった一人だけ選べと言われたらデビッドリンチ監督を挙げます。それほど僕はこの人を敬愛しています。

イレイザーヘッドから始まり、ツインピークスで大ヒット、ブルーベルベッドにロストハイウェイなど、どれもこれも癖のある作品です。

まず子供の頃に見た「ツインピークス」がとても素晴らしい作品で、そこからすでにファンでした。テレビドラマでこれほど素晴らしい作品はいまだにないと思っています。

ただし、ツインピークスは、あまりに人気が出てしまい、「ファンと制作会社」に食いつぶいされてしまった悲劇の作品です。監督と製作側がもめにもめてしまい、不本意な結末を迎えてしまいました。

ちなみに去年やっていた「新作」はまだ観ていません。全巻セットで販売されたら買うつもりです。ツインピークスについてはまたいずれ語りましょう。


リンチワールドが完成されたのは間違いなく、インランドエンパイアの前作、2001年公開の「マルホランドドライブ」です。この作品はカンヌ映画祭の監督賞を受賞しました。

僕はこのマルホランドドライブを映画館に八回観に行きました。それほど、天地を揺るがすほどの衝撃を受けた作品でした。一回目は全く理解できず、二回、三回、四回ほど見てようやく見えた迷路の出口。そこから自分なりの答え合わせをするのに、また四回観に行ったほど、難解そして怪奇で耽美な物語。今でも半年に一回くらいはレンタルしてきて観ています。今でこそ「マルホランドドライブ解説」なんてサイトもありますが、当時はまだインターネットがそこまで普及していなかったので、情報なんてないに等しかったのです。


とにかくプロットに隙がない。映像、演出、音楽、全てにおいて僕にとって完璧中の完璧の作品です。リンチワールドがまさに結晶化されています。


そんなマルホランドドライブを経て、ついに世に出たのが「インランドエンパイア」です。胸を躍らせながら数年待ちに待ったリンチ監督の新作です。


観てみると…マルホランドドライブをさらに超える衝撃が待っていました。


まず上映時間180分。3時間なんて、よほど重厚の物語じゃなければもちません。


にも関わらず、リンチ作品には重厚さや分かりやすい物語の道筋は一切ありません。例えるなら酸素が薄くて暗い迷路を3時間ひたすら迷っている感じです。しかも出口がないかもしれない迷路。苦しい。でも歩きたい。自分なりの出口を見つけたい。


この時僕は初めて体感しました。本当の意味でのルールの破壊を。


怪奇で甘美な物語。


それでいて、暴力的なのです。何もかも暴力的です。といっても殴る蹴るなどの物質的暴力ではありません。そういうシーンもないことはないのですが、演出としての暴力ではなくこれはもう精神ウィルスに近い。

人がなんとなく持っている「常識」という概念を真っ向から壊しに行った作品、とでも言いましょうか。


どこかテレビショッピングを思わせる謎のうさぎの着ぐるみ家族。突然流れる80年代風MVのロコモーション…。


ああ…僕が求めている映画はこういう形なのか、と気付いた瞬間でした。


そんなことはあるはずないけど、これを見終わった時には僕は死ぬんじゃないか、とさえ思いました。


僕がチーム西の森で作る作品もよく分からないなどと批評されます。はっきり言って「本当はこんなもんじゃないよ」と言いたいくらいです。もちろん上には上がいるし、僕はこれでも日本の映像文化に合わせて作っています。


みんな本当の意味で「やばい作品」に出会ったことがないんだな、自分の常識をきちんと守れる範疇の作品しか出会っていないんだなといつも思います。それが残念だから、僕はだらだらとこんなことを書いているのだけれど。


このインランドエンパイアもまた面白い、という形容詞では表現できない作品です。


しかもこの作品はなんと全編手持ちのビデオカメラで撮影されました。当時45万円ほどの家庭で使っていてもおかしくはないレベルのカメラです。2000年に発売されたそのカメラ、今ではなんと2万円で買えます。なので今見ると画質が粗いのなんの。


当然そんなことはリンチワールドの弱点になるわけもなく、むしろその粗さこそ美点にもなっています。


さらに、まとまった脚本を書かずにアイディアが降って来た時にだけ脚本を書き、撮影するというとんでもないスタイルで制作されました。製作期間はなんと2年半。出資会社はお金を出し渋り、ほとんど自主制作のようなスタイルでこの作品は作られました。なので、ハリウッド作品のようなスケールはなく、どこかインディーズの雰囲気があります。


そんな破天荒な作品に、マルホランドドライブの主演の二人がカメオ出演(ウサギの家族の声)ナスターシャキンスキーもちょい役で出るという豪華な俳優陣。これもまたデビッドリンチの魅力のなせる技です。この人はきっと一般人より、センスある業界人に愛されているような気がしますね笑。


主演のローラダーンはリンチ作品の常連です。この人がまたなんというか…失礼ながら、ハリウッド女優のような派手さ、整えられた美しさ、ゴージャスさ、といったものが一切ないのです。それがまたすごく素敵です。この人の魅力は作品を見ないと伝わりません。作品でこそ、魅力全開のまさに本物の女優です。


役者たちにも愛された「インランドエンパイア」は、全米批評家協会の実験的映画賞という賞を受賞しました。いいですね、実験的映画賞って。


この「インランドエンパイア」は気力体力をフルに充電し、知力も総動員して視聴することをおススメします。というよりもそこまで本気にならないと、エンディングまでたどり着くこと自体困難です。


百年の孤独もそうでしたが、小説と違い、映画は意志とは関係なく必ず数時間で完結します。同じ難解な作品といっても、心構えがやはり違います。小説は自分の手でめくるもの、映画は流れていくものに自分を合わせる媒体です。油断してると勝手に映画は終わり、何も得られなかった、ということも充分ありえます。


別に僕は難解な作品だけを好む、というわけではありません。グーニーズだってスターウォーズだって大好きです。


でも好きの次元がやはり違うということなのでしょう。


カップルや家族で見てはいけません。一人で戦ってみてください。


もしこの作品を気に入ったのなら、その後あなたの娯楽に対する概念は一変することでしょう。


余談ですが、僕が買った初回限定DVDにはなんと

貴重すぎる脚本が付いてました。もちろん英語ですが、チーム西の森を結成し、映画制作を始めた頃はひたすら読みふけっていました。この脚本は今では絶対の財産です。


では今回はこの辺で。


#デビッドリンチ #インランドエンパイア #サブカルチャー #チーム西の森

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